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大阪地方裁判所 昭和44年(わ)414号 判決

本藉

大阪市東成区大今里本町二丁目一六三番地

住居

右同所

酒類販売業兼飲食店業

木林菊夫

明治四三年一月一六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤本徹出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、肩書住居地等において、被告人の妻木林栄の名義で酒類販売並びに飲食業を営み、同女名義で被告人の所得税の申告をしているものであるが、所得税を免れようと企て、

第一  昭和四〇年度分の所得金額が一九、八四五、四四五円、これに対する所得額が九、三四五、五〇〇円であるにも拘らず、売上の一部を除外しこれによつて得た資金を仮名預金口座に預入して秘匿する等の不正行為により、右所得金額中一七、七六八、七二二円を秘匿した上、昭和四一年三月一五日、東成税務署において、同署長に対し、右木林栄名義で同年分の所得金額が二、〇七六、七二三円、これに対する所得税額が三六七、五一〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税八、九七七、九〇〇円を免れ、

第二  昭和四一年度分の所得金額が一八、九七二、二七〇円、これに対する所得税額が八、七四五、一〇〇円であるにも拘らず、売上の一部並びに株式売買による利益等を除外しこれによつて得た資金を仮名預金に預入して秘匿する等の不正行為により、右所得金額中一六、六二〇、七八八円を秘匿した上、昭和四二年三月一四日、同税務署において、同署長に対し、右木林栄名義で同年分の所得金額が二、三五一、四八二円、これに対する所得税額が四〇六、一六〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税八、三三八、九〇〇円を免れ、

第三  昭和四二年分の所得金額が一四、六四六、七一七円、これに対する所得税額が六、二六二、五〇〇円であるのに拘らず、前記第二と同様の不正行為により、右所得金額中一一、五八一、一四五円を秘匿した上、昭和四三年三月一五日、同税務署において、同署長に対し、右木林栄名義で同年分の所得金額が三、〇六五、五七二円、これに対する所得税額が六〇五、〇〇〇円である旨過少に虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税五、六五七、五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一、第一二回、第一七回、第一八回、第二九回各公判調書中の証人木林栄の供述部分

一、第一二回公判調書中の証人木林愛之の供述部分

一、第一九回、第二〇回、第二一回、第二二回、第三一回、第三二回各公判調書中の証人菊地和夫の供述部分

一、東成税務署長作成の昭和四三年一二月一八日付証明書三通

一、収税官吏作成の左記の者に対する各質問てん末書

木林栄(五月二〇日付、九月二八日付、一〇月三一日付)、木林愛之(二通)、矢谷敕、矢谷信通(二通)、難波和子、浦洋一、土肥清彦、谷崎よし子、木林一子、山崎勉、村嶋美津枝、安井忠光、森本昭弘、奥戸已一、亀田太郎、葭谷幸子、馬場留吉、馬場きくの、佐々見宗夫、松本俊昭、春田政次郎、射場本隆造、田知行義男、梅北泰昌、柳原徳重、海老名光司、今本金蔵、

一、木林栄作成の経費仕入明細書

一、左記の者の作成した各供述書

矢藤明、杉山弘実、中村邦日登、奥山荘一郎、山路昌彦、川村俊夫、深津茂雄、高寺豊光、川西宏枝

一、左記の者の作成した各上申書

小川アイ子、今津利雄、海老名光司

一、収税官吏作成の現金預金有価証券現在高検査てん末書一一通

一、小林良雄作成の定期預金元帳写二通、普通預金元帳写、及び貸金庫使用申入書写

一、左記の作成した各確認書

松本敏夫、二宮憲夫(二通)、堀子利雄(二通)、戸田挺三、中川政男(四通)、五十嵐英一郎、住友銀行今里支店、渡辺利嘉三、藤村重信、乾博、今津保次郎、上田義和、小川秀男、春成豊雄、加藤照夫、下村藤次郎、山路昌彦、阿形繁、田口周一郎、福森藤志男、藤本五郎、松井寅吉、後金十郎、城殿鎮治、河合滉二、倭島健吉、鴨川武男、本間正三、森川栄司、入江文男、宮崎茂、広田進一(二通)、坂口法宣、川戸英行、安福又四郎商店

一、左記の者の作成した各回答書

三菱銀行今里支店長、住友信託銀行本店証券代行部、中央信託銀行(三通)、東洋信託銀行証券代行部、三井信託銀行証券代行部、三菱信託銀行証券代行部、安田火災海上保険株式会社株式課、安田信託銀行証券代行部決算課(二通)、日本生命保険相互会社布施支社、第百生命保険相互会社布施勤倹営業所

一、左記国税査察官作成の各調査報告書

菅野保文(五通)、菊池和夫(八月一九日付、八月二三日付二通、九月八日付、九月一四日付三通、九月二七日付、九月二八日付、九月三〇日付、一〇月七日付、一〇月一二日付、一一月一四日付、一二月九日付)

一、国税査察官作成の反面調査てん末書五通

一、国税査察官赤松英彦作成の調査書

一、国税査察官菅野保文作成の預金元帳作成報告書

一、国税査察官菊池和夫作成の公表元帳作成報告書及び簿外分元帳作成報告書

一、左記の押収物件-()内の漢数字は押収番号昭和四五年押第五八七号の枝符号である-

賃金支払帳六冊(一、二、三、二四)、信用取引顧客原簿写一綴(四)、訴訟関係書類一綴(五)、不動産売買契約書一枚(六)、告訴関係書類一綴(七)、雑メモ一綴(八)、ダイヤグラン買付報告書一綴(九)、印鑑二六個(一〇、四二)、当座小切手帳控五冊(一一)、小切手および当座入金帳綴一綴(一二)、税務受取綴一綴(一三)、領収証請求書等級一綴(一四)、確定申告関係書類綴五綴(一五)、普通預金通帳一冊(一六)、天王寺ステーシヨンビル関係書類一綴(一七)、書簡三束(一八)、四三年経費帳一綴(一九)、小切手帳控二綴(二〇)、総勘定元帳三綴(二一、二二、二三)、株式売買関係書類一綴(二五)、四二年度日記帳一冊(二六)、デイリーノート二冊(二七)、領収証一綴(二八)、空封筒一綴(二九)、印刷物一綴(三〇)、不動産売買契約証書類一綴(三一)、株式関係メモ一枚(三二)、昭和四〇年分損益計算明細書一綴(三三)、不動産権利書一綴(三四)、指定金銭信託関係メモ一綴(三五)、弁護士関係支出明細一綴(三六)、預金メモ一綴(三七)、株式売買計算書一綴(三八)、領収書一綴(三九)、信託関係計算書一綴(四〇)、生命保険領収書一綴(四一)、(株)名簿一冊(四三)、売掛帳四綴(四四乃至四七)、ビール売掛帳四綴(四八乃至五一)、容器買掛元帳一綴(五二)、元帳一綴(五二)、元帳二綴(五三)、売上帳ノート一冊(五四)及び大学ノート一冊(五五)

一、被告人の検察官に対する供述調書七通

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書一一通

一、第二三回、第二五回、第二七回各公判調書中の被告人の供述部分

一、被告人の当公判延における供述

(法律の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 青野平)

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